« 出版記念展(東京) | トップページ | マンパワー »

2012年2月16日 (木)

漁船に乗れないわけ

Img_2859Img_2932

何が大変かって、うちの父親から話しを引き出したり
(身内には漁のうんちくを全くしゃべらない、他人にはしゃべるときもある
しかし機嫌が悪いと自分の部屋から出てこない)、
そして、漁船に乗り込むことが一番のくろうだった。

こっそり弟の漁船に乗り込むから、沖合ではじめて父と遭遇することもある。

何故、ここまで漁船に乗れないか。

1番には、危険だから。


博打を打ちにいく
日々、同じということがない海に。
それも、命をかけて。


ほんとうに、あたりまえのようにベテラン漁師が
次々、海に落ちて、漁中の機械に巻かれて命を落とす。

撮影のために帰省してる最中も一人ベテラン漁師が亡くなった。
それまで、もしかしたら乗せてあげてもいいかもといってた
父の友達のカレイのおっちゃんまでが、
「俺は人の命はよう、預からん。」と断ってきた。

しかも、漁師は遠い昔から、頑に『縁起をかつぎ』
自然を畏れみ、敬い、感謝する儀式を守ってきた。

船の神様は、女性という説もあるため、
女が乗船すると嫉妬するといわれている。
また女が漁網をまたぐと、魚がとれなくなるとも言い伝えられているのだ。

その聖なる領域、命がけの船の上に、興味本位で来ようとは何事や!
『お前らは、簡単に考えとったらあかん!
こっちは命かけて商売に行っとんのや。』
と、東京から友達と二人、目の前で怒鳴られたこともある。

父の弟で唯一会社勤めである叔父の友達はアマチュアカメラマンで
漁師の働く姿をカメラで撮りたいから船に載せてほしいというので
叔父が父に頼んだけど、
『こっちは命かかっとんのや、絶対あかん!』とばっさりだったらしい。

なので、叔父にも、この本をつくってる最中
「お前、その部分は想像して書け。漁の船に乗るのは俺でもできやんのや」
言われていたのだ。


弟も『こっちは遊びとちゃうんやぞ』と。
しかし、最後はなんとかしぶしぶ了承してくれた。


ただ、『船に酔ったら承知せん!』と
釘さされていたので、カメラマンの子に酔い止めは必須。

デジタルカメラとビデオカメラ、両方撮りたかった私は、
何度か夫に懇願した。
東京からいっても、天気や海の状態がよくなくば船には乗れない、
カメラマンの子もそんなに日数とれない、一度だけ撮影に付き合ってくれと。
『船の上はとにかく危ない、命がけ』『船で絶対酔うな!』と
釘さされていた事を聞いていたがゆえに、船に酔う夫は、
絶対嫌だと、後ずさりした。私一人で乗船ということもあった。


漁船に乗れたのは、数回しかない。
天候も大きく左右する。

そんな、すべての条件がそろった、奇跡的に乗れた数回のうちの一回。
カメラマンの子が、弟の船の隣りにひっつけてあった父の船に
乗り込んで、船の上で一般人が入れない
大型の網をロープで引き上げていく様子を、奇跡的に押さえてくれた。

というのは、弟の誘導があったからだ。
これがなかったら絶対その領域には入れない。
プロの漁師でもロープが飛んで来て、命を落としかねない現場の近距離。

そしてその写真がすごくいい。
今まさに海の上での博打の結果がでる、魚を引き上げようとしている
緊迫している瞬間だ。


カメラマンの齋藤雅子さんが押さえてくれたあのシーンは
後にも先にももう撮れないシーンで、宝だ。


そうそう、それで、男であっても漁船に乗る事は、たいへん難しい。
漁師は、船の上で、酔われる事を嫌がる。


そして、父のような、ザ・職人、というような、
昔気質の厳しい漁師であればあるほど、仕事の現場には
絶対人を寄せ付けないのだ。
女なんて、とんでもない!ってことになる。

植林を体験しにいったときも、父の世代の漁師ほど、
写真に撮られる事をことごとく拒んだ。
顔や姿には、やはりザ・職人が刻まれていて、これぞ
海の男、魚をとる職人!という貫禄だ。
そういう人ほど、写真に撮ると絵になるのだけれど。

というわけで、命をかけて、海に博打をうちにいく漁師の写真は、
そうそう撮れないということをあらためて痛感したのでした。

ちなみに、カメラマンの齋藤雅子さんが取材中に言っていた。
もし自分の子供がいたとして漁船に乗るとなったら止めると思うって。
ん〜、たしかに、自分もそうかも。


|

« 出版記念展(東京) | トップページ | マンパワー »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



« 出版記念展(東京) | トップページ | マンパワー »